「家と畑をまとめて、分譲の業者さんに買ってもらえないか」。菊陽町で、そんなご相談をいただきました。相続したご実家と、そのまわりの畑や山林です。場所は市街化調整区域。ただし、県が指定した「集落内開発」の区域にかかっています。
分譲業者が値段を出すには、何区画とれそうか、道路や造成にいくらかかりそうかが見えている必要があります。そこで、価格の話の前に、町と県の資料を一つずつ読みました。個人名や地番などは省いていますが、実際に調べた順番のままです。
調整区域でも、住宅地にできる区域がある
市街化調整区域は、市街化を抑えるための区域です。家を建てるために土地を造成したり区画を分けたりするには、原則として開発許可が要ります。
熊本県には「集落内開発制度」があります。都市計画法第34条第11号にもとづいて県が条例で指定した区域の中なら、条件を満たせば住宅の開発が認められる仕組みです。指定区域があるのは合志市・菊陽町・嘉島町・益城町の4市町で、菊陽町では平成20年に指定されました。
住宅の主な条件は、県の手引きでは次のとおりです。
- 戸建て住宅(2戸建ての長屋を含む)であること。賃貸目的のものは対象外
- 1区画の敷地が200㎡以上500㎡以下
- 建物は高さ10m以下、地下を除いて2階建てまで
- 分譲で区画を分ける場合は、申請する敷地の面積が5,000㎡未満(市町との協議による例外あり)
区域の中でも、土砂災害警戒区域などに入っている土地は許可されません。想定される浸水の深さが3m以上の場所では、床を高くするといった対策を求められることがあります。
区域の線は、道路にもかかってくる
いちばん時間をかけたのは、ここでした。
ご相談の土地には、区域の線の外にかかる部分がありました。区域外の土地を通れば、別の方向の道路にも出られます。最初は、そちらに分譲地への道路をつくる案も考えました。
ところが県の手引きでは、外の道路につなぐための取付道路も、原則として開発区域に含めることになっています。集落内開発は、指定区域の中で行う開発が対象です。区域外の土地に新しく道路を通すと、開発区域が指定区域からはみ出してしまいます。道路の幅をいくら広く取っても、この点は変わりません。
開発審査会の審議を経て個別に許可する規定(第34条第14号)もあります。確認した資料だけでは、今回の住宅分譲に適用できる根拠は確認できませんでした。個別の可否は町・県への確認が必要なため、現時点ではこの案を売却の前提にしていません。通るだけなら使える道でも、分譲地の道路としては使えないことがある。地図を眺めているだけでは気づきにくいところです。
もう一つ。区域に入っている面積が、そのまま売れる宅地の面積になるわけではありません。道路や、道路を広げるために下げる部分、排水の施設に使う分を差し引いて、ようやく区画の数が見えてきます。
道路の幅は「何m」だけでは決まらない
開発で新しくつくる道路は、住宅地なら原則6mです(短い区間などの特例があります)。その道路がつながる外の道路にも、住宅の開発では原則6.5mが求められます。周りの道路の状況からやむを得ないと認められれば、車の通行に支障がない範囲で4mまで緩めてもらえることもあります。ただし、この特例を使う場合も、開発区域が接する部分は原則として規定の幅まで広げる必要があります。
ややこしいのは、道路台帳に書かれた幅と、開発の審査で数えられる幅が同じとは限らないことです。道路沿いに水路があって蓋を掛ければ、見た目の幅は広がります。けれど、その部分を道路の幅に入れてよいかは、蓋の構造や管理のしかたによって変わるため、道路・水路の管理者と開発許可担当の双方に確認します。
道路を広げる方法は、敷地の側を下げる、隣の土地の方に協力していただく、水路の上を使えないか相談する、などいくつかあります。どれも測量をして、町や県、管理者と話をしてからでないと、できるかどうかも費用もわかりません。行き止まりの道路になる場合は、車が向きを変えるための広場が必要になることもあります。
畑は、区域の中でも別の許可が要る
集落内開発の区域に入っていても、畑や田を宅地にするには、農地法の転用許可が別に必要です。菊陽町も、区域の中でも転用が認められないことがあるので、事前に農業委員会で確認するよう案内しています。
農用地区域(いわゆる青地)の農地は、原則として転用が認められません。宅地にするには、先に農用地区域から外す手続き(農振除外)が必要で、時間もかかります。今回も、条件の違う土地は分けて検討し、ほかの土地の話を止めないようにしました。登記の地目と今の使い方が違う土地も、農地にあたるかどうかを確かめます。
古い家は、壊す前に税金のことを
建物を先に解体するか、そのまま引き渡して買主に解体してもらうか。解体費は、建物の大きさや倉庫の有無、残っている荷物、石綿(アスベスト)の有無で大きく変わるので、正式な見積を取ってから比べます。
相続した家と土地を売るときは、「被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例」が使えるかを早めに確かめます。条件を満たせば、譲渡所得から最高3,000万円(家と敷地を相続した人が3人以上なら2,000万円)を差し引けます。主な条件は次のとおりです。
- 昭和56年5月31日以前に建てられた家であること
- 相続の直前に、亡くなった方のほかに住んでいる人がいなかったこと(老人ホームなどに入っていた場合は、別に要件があります)
- 相続してから売るまでに、事業や貸付、居住に使っていないこと
- 売却代金が1億円以下であること
- 相続の開始から3年を経過する日の属する年の12月31日までに売ること。制度自体は、2027年12月31日までの売却が対象です
- 家を取り壊すか、耐震基準に合わせること。売った翌年の2月15日までに、買主が取り壊す場合も対象になります
手続きには、町が発行する「被相続人居住用家屋等確認書」が要ります。母屋と離れや倉庫を一緒に使っていた場合は、特例の対象になる敷地が床面積の割合で絞られることもあるので、どこまで対象になるかは税理士に確かめます。買ったときの金額がわからない古い土地は、売った金額の5%を取得費として計算することができます。
業者に見せる資料を、先にそろえる
分譲業者は、開発できる見込みが立たない土地には、書面の買付を出しにくいものです。業者ごとに一から調べ直していては時間がかかりますし、前提がばらばらだと条件を比べることもできません。
そこで当社では、区域の範囲、道路の案、農地の扱い、建物と費用の見通しを一つの資料にまとめ、同じ前提で検討してもらうようにしています。近くの分譲地の坪単価を土地全体の面積に掛けても、この土地の値段にはなりません。分譲業者は、販売の見込み額から、道路・造成・解体などの費用や事業利益、許可に伴うリスクを見込んで買取価格を検討します。売主さんの手取りは、その売買代金から仲介手数料や税金、売主負担の費用を差し引いて確認します。
許可が下りることを条件に契約する場合は、下りなかったときの期限や解除、手付金の扱いを、契約の前に決めておきます。
同じような土地をお持ちの方へ
調整区域の土地は、値段の前に「何ができる土地か」を確かめるところから始まります。資料がそろっていなくても構いません。あると話が早いものを挙げておきます。
- 登記事項証明書と公図(法務局で取得できます)
- 固定資産税の納税通知書
- 昔の測量図や売買契約書(あれば)
- 建物の建築時期がわかる書類(あれば)
- 遺産分割協議書など、相続の書類
菊陽町・大津町・合志市の調整区域の土地も、現地と資料を見ながら一緒に調べます。
確認資料(2026年10月11日確認。制度は改正されることがあります)
調整区域の家や土地をお持ちの方へ
所在地と今の利用状況、「まとめて売りたい」「道路の条件が分からない」など、気になっていることをお知らせください。手元の資料から確認を始めます。
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